パリ滞在記(1-1)

壁の光
壁の光

通信社のインターンが終わり、私は実家でこれからのことを漫然と考えていました。物を書く道は続けたい。だが写真をもっと学びたい。この両者の狭間で、今後進むべき道に悩んでいました。インターン期間中も写真のことは常に頭にあり、私はマスターテヒニカというドイツから並行輸入された大型カメラを購入し、東京での撮影を試み続けていましたが、それはなかなか上手くいきませんでした。東京で使うにはあまりにもカメラが大きすぎたのです。そんなジレンマも感じている中、実家でテレビを流し見していると、ふとパリの光景が映し出されました。その瞬間です。「ここに行く!」と直感し、私はすぐに旅行代理店に駆け込んだというわけです。

それから2週間後には、私はパリにいました。思い立った後の私の行動力には、ちょっとした自信があります。出国前にホテルを予約し、3週間の旅程で計画を立てました。計画、といっても到着から数日分のホテルを予約しただけ。写真を撮りに行くのであって、観光に行くわけではありませんので、下調べもほとんどしませんでした。ホテルも現地で探すつもりでしたし、パリを出る予定もありませんでした。ただ、私はパリを写真に収めたいという願望だけを胸に旅立ちました。

シャルル・ド・ゴール空港についた瞬間、外気に漂うフランスの香りを嗅いだ時、私は不思議と初めて来た気がしませんでした。どこか懐かしい感覚を覚えました。「来るべきところに来た」と感じたものです。フランス語も喋れない私ですが、英語だけを武器にホテルへたどり着き、チェックインを済ませ、冬の凍てつくような寒さのパリを歩き始めました。ジェラルミンケースに大型カメラとフィルムケース10枚、大型三脚など、総重量で10kgほどあったでしょうか。担ぐにも重すぎるのでドリーに積み込んで、運びにくい石畳の道をゴロゴロと進んでいきました。

それからの2週間は、初めてのパリをひたすら歩き続けました。一日8時間ほどは歩いたでしょうか。サンミッシェルからモンマルトルまで、上り坂も下り坂も、大通りも細い小道も、ひたすら歩きました。冬のパリは日照時間が短いので、なかなか歩道の下まで陽が射してきません。わずかな光を求めて、歩くしかなかったのです。

そして2週間が経ったある日、変化が起きました。それは、私の内部において非常に大きな変化でした。それに関しては、次回お話ししましょう。

それでは、寒い日が続きますが、皆様お身体には重々ご自愛くださいませ。

不一
成瀬拝