連休が明けて−私に起こったひとつの異変

ゴールデンウィークも終わりましたね。終わってみると毎度ながらあっという間だなぁと感じますが、皆さんはどのような連休を過ごされましたか?全国的に休祝日は春の陽気に恵まれ、平日は曇りや雨、といった、行楽のために神様があしらってくださったような連休になりましたね。陽気の中を遠出をされた方も多かったのではないでしょうか?

私はまだ体調が本調子ではなかったので、もっぱら都内の近場の中で陽気を楽しみました。遠くへ行かなくても楽しめるのが、東京のいいところかもしれませんね。大きな公園や渓谷も私の住まいから遠くなく、散歩やピクニックなどを楽しみました。非常に充実した連休となりました。

さて、連休も明けて今日からお仕事に戻られた方も多いでしょう。私は連休は思いっきり楽しむことにし、雑多なことや仕事に関することは考えないようにしていました。それでもいろいろと思うところがあり、調べ物などに時間を費やすこともでき、これからの具体的な目的も見えてきました。

一番大きな収穫は、これからの撮影・執筆活動の目的がはっきり見えてきたことです。特に執筆の面で、ある構想が生まれました。皆さんは、マリオ・ジャコメッリというイタリアの写真家の名前を聞いたことがありますでしょうか? ふとしたきっかけで今を時めく写真家、古賀絵里子さんの個展に行く機会があり、そこで作家ご本人とお話しする機会がありました。初対面で話すのが苦手な私はあまり言葉も出てきませんでしたが、彼女がいま、東京都写真美術館で開かれているジャコメッリの写真展の招待券をくださったのです。これもいい機会だと、その日のうちに恵比寿に寄って観てきました。

私の特質だと思うのですが、私は第一印象というものをあまり重要に考えていません。大切なものは、一目惚れではなく時間をかけて、じっくりと染み込んでくるものと考えています。ジャコメッリの作品を観たときも、私はあまり大きな感動を得たわけではありませんでした。写真機材、感材も黎明期にあった環境の中で撮影された写真は、技術的にはまだまだ未完成な部分が多く、私は技術よりもジャコメッリの視点を理解しようとしながら作品群を眺めていました。もともと詩人を目指していたというジャコメッリの視点には、通常の写真家とは一線を画したものがあり、それがとても興味深く感じましたが、それ以上の印象は受けませんでした。図録も購入しましたが、まだ一点一点じっくりと見直すほどには活用していません。これが私の写真鑑賞のスタイルなのです。むしろバロック時代の絵画の方が第一印象としての感動も大きく、例えばしばらく前に観に行ったラファエロの絵画を目の当たりにした時の方が感動は大きかったです。これは図録も楽しみ、一点ずつじっくりと見直しました。

そんな私のジャコメッリへの印象でしたが、展示でもっとも興味を引いたのは、作品群ごとに書かれていた短い言葉でした。いまここに図録がないのでご紹介ができませんが、詩人を目指していただけあって写真の裏にある意味を深く言い当てた、実に素晴らしい文章でした。ああ、ジャコメッリはこういう考えから写真と向き合っていたのか、と知ることができる、詩人らしい味わいのある言葉に深く感動しました。

そうして写真展を後にして、しばらく私はジャコメッリのことを考えていました。言葉と写真には、どこか不思議な連帯関係のようなものがあります。写真家には文章力が非常に長けている人が多いのも、そんな特性からかもしれません。私はジャコメッリの写真よりも言葉の方が頭の片隅に残り、次第に根を深くしていくのを感じました。そこで、もう一度東京都写真美術館に観に行くことにしました。一度観た展示ですので、感じ方も違ってきます。どの写真群がどこに展示されているか、どのような言葉で説明されているか、だいたい頭の中にありましたので、気構えなく観ることができました。そこで突然、私の中に考えが浮かんだのです。ジャコメッリの作品についての詩を書いてみよう、と。

詩人を目指した写真家の作品を、私のようなものが改めて言葉にする、というのが烏滸がましいかもしれません。しかし、同じように詩人を目指し、写真を愛している私がジャコメッリと対峙し、私なりの言葉で表現してみることは、私の創作活動に大きな変化をもたらしてくれるように感じました。説明すると大仰ですが、二度目にジャコメッリの写真を観たとき、「詩を書いてみよう」とただ直感的に感じたのです。

詩人は夢見人、のように印象を持たれる方も多いかもしれませんが、本当の詩人は実は非常にリアリストです。現実世界と孤独のうちに深く対峙し、それを言葉に還元するのが真の詩人です。私はジャコメッリの作品という、ある意味ひとつの完成を築き上げた写真とまっすぐに対峙し、それを言葉にしてみようと思い立ったのです。

まだ彼の作品を勉強している最中ですので、果たして言葉にできるかどうかは分かりません。構想は構想のまま終わってしまうかもしれません。でも、ひとつの構想が、はっきりとした創作の目的が私の中に生まれたことに大きな意味があります。とにかく挑戦してみよう、と強く決心したのです。

失敗に終わったら、どうか笑ってお赦しください。私が詩人になれるかどうかを、ジャコメッリは私に試している、と感じています。長くなりましたが、この連休で私の内部に起こった異変について、打ち明けてみました。マリオ・ジャコメッリ展は東京都写真美術館で5月12日(日)まで開催しています。このブログを読んで、ご興味を持たれた方がおりましたら、是非観に行ってみてください。そして、何を感じるかご自分でお確かめになってみてください。

マリオ・ジャコメッリ展
http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-1807.html